2007年07月30日

第三部 序

狂ったような笑い声がまるで嵐のように、ぐるぐると渦巻いていて頭がおかしくなる。いや、そんなものがなくたって気が狂う。
真紅の雨が降り注ぐ。
あかくて、あかくて、あかい世界のなかで。
次々と倒れ、見えなくなっていく命の向こう側で、そいつはさも楽しげに笑い声を立てている。風がびゅうびゅうと唸り、それすらもカマイタチの刃となって傷を作る。
声はない。
これは、戦いですらない。
首に白刃、全身に無数の痛みを覚えたら、もう立っていられなくなった。
「・・・・ごめん、・・なさい」
誰に向かって言ったのか、もう何もわからない。
最後に誰かの泣き顔が浮かんで、パンとはじける。
急速におりていく暗幕の下で、全てが終わったのだと知った。

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posted by さくらもち at 16:24| Comment(4) | とある魔法師の物語

2007年07月27日

幕間 その弐(あと)

「また、この展開か」
「好きでしょ?」
「・・ほざけ」
「さっさとウチにくればいいのに、そんな事してるからよ」
「だ・・、んちょ・・・・?」
「はいはい、今回の獲物sakuraを捕獲終了。クエスト報告の為に、街へ帰還するよ〜」
「えもの!? アイタッ」
「いいから帰りなさい」
「リターンスクロールで叩かなくてもいいじゃないッ」
「あら、持ってないかと思ってねぇ」
優しいでしょ、と笑いかけられて、sakuraは何も言えない。こっそりとカバンを探れば、やっぱり残数がない。
「やい、コチ!」
「ん?」
「おぼえてろよッ」
「・・・・オンナノコなのに」
touyaに怒られるぞ、と無人になった空間へ呟く。胡伽はといえば、まだ檻の効果が消えないので動けない。
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posted by さくらもち at 22:17| Comment(3) | とある魔法師の物語

幕間 その弐(まえ)

時は、数日前へとさかのぼる。
クァンとルバルの軌跡を追いながら、たどり着いたのはクラーブ2階だった。まだ未熟な戦士だった頃、行方不明となったルバルを探したのがココらしい。
「伝説も今は・・」
せんなき事を呟きそうになって、sakuraは音のない吐息へと変えた。ためた息を吐き出して、頭の中もクリアにする。もういい加減に、上の空で戦えるほど相手は弱くなかった。
呪いの鎧ザカカと、類人猿のなりそこねたようなデメラトンがうろついている。
遺跡の前にも彫像があるヤタクの姿が、柱の影から見え隠れする。鳥のように身軽でもないためか、飛行時間は笑っちゃうほど短い。飛び跳ねるように羽ばたきながら、侵入者にブレスを吐きかけるのだ。
「必死、だったろうな」
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posted by さくらもち at 21:48| Comment(0) | とある魔法師の物語

2007年07月20日

第二部 26話

あれから、少しくらい強くなれただろうか。
「あ、アイス・・ッ」
「遅い」
自身を保護する魔法陣が消え、代わりに青い檻が出現する。聖騎士のフォースは対象を束縛し、動けなくするのだ。
「くっ」
魔法をかけ直しているヒマはない。檻を解除すると同時に、瞬間転移を発動させた。その間にも戦士が近づいていて、轟く雷鳴も構わずに斧が振り下ろされる。
「反応がまだまだ遅い」
「だ、だって!」
Wishの冷えた声音は、練り込んだ魔法弾と共に飛来する。避けられずに被弾するものの、なんとか致命傷はさけられた。即ダウンしない程度には、防御も体力も上昇している。
「言い訳してるヒマあるの?」
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posted by さくらもち at 22:06| Comment(7) | とある魔法師の物語

2007年07月13日

第二部 25話

戦いの連続に、みんな疲れていたのだろう。ローゼの店で飲み明かした翌日は、sakuraが一人で街を眺めていた。もう日も高いというのに、誰も集まってくる気配がない。
崖にせり出した岩は座るのにちょうどいい。このお気に入りの場所で、風景の移り変わりを見るのがsakuraは好きだった。
「sakura!」
「あ、ころりんだ」
「凛って呼びなさい」
「ころりんは、ころりんだよ〜」
「ったくもう」
彼女には、言っても無駄だと分かったらしい。苦笑して、ころりんは周囲を見回した。
「エロンたちは?」
「まだ寝てると思うよ」
「そっか。デジレちゃんには、厳しい所も行ってたもんね」
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posted by さくらもち at 23:20| Comment(6) | とある魔法師の物語

2007年07月06日

第二部 24話

夕日にゆれる酒場に、エロンは一人でいた。ふと視線を感じると、物欲しそうにしている子供がいる。
「おなかすいてるの? これ、食べる?」
頼んだものの食欲がなくて、冷めるままになっていた料理。席を譲ってやると、びっくりしたようにこちらを見上げた。
「いいよ。全部食べちゃって」
「え?」
「おねえちゃん、お腹いっぱいなの。でも、捨てるのもったいないでしょ」
「う、うん」
戸惑い、料理とエロンの両方を交互に見る。未発達の咽喉が大きく動く。手を伸ばそうとすると、子供はビクッと震えた。
何度か、体罰を受けたのかもしれない。

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posted by さくらもち at 23:32| Comment(3) | とある魔法師の物語