2007年12月28日

第四部 1話

乾いた音を立てて亀裂が走り、杖が砕ける。
「ち・・っ」
舌打ちをして残骸を捨てるなり、眼前に迫るモンスターたちから距離をとる。代わりに走り出た女傭兵が刃を合わせた。その盾に奴らの爪は通らない。魔法の加護を得た聖剣は邪に染まらない。
「やっぱり強度上げないと、無理か」
その姿は騎士のようでもあり、術師のようでもあった。新たな杖を引っ張り出すと、前方に掲げながら詠唱に入る。
傭兵の頭上を越えた矢が、彼女の兜を弾き落とす。ふわりと広がる赤い髪はどこかくすんだ色に見えた。無造作に編んだ房が背中を叩き、ほつれた髪筋が頬を撫でては、離れゆく。
「吹っ飛べ!」
派手な音を立てて、大きな落雷がシバブの大地に穴をあけた。更に杖をふるえば、氷塊が穴へめり込む。続けて巻き起こる業炎が辺りを焼き尽くして、範囲内のモンスターを消した。
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posted by さくらもち at 23:53| Comment(2) | とある魔法師の物語

2007年12月21日

第四部 序

太陽の光も届かない礼拝堂で、朗々と念仏のような呪文が続いている。まじないと書いて「のろい」と読むなど、よくできていると湖伽は思った。
今響く音こそ、そう呼ぶに相応しい。
「カテル様・・」
「おおぉ・・」
感嘆のようなものが洩れて、再び呪文の詠唱が再開される。
カテリオンたちは、ここ数日の間ずっとこの状態なのだ。彼らの信奉する神が何を告げたか知らないが、狂信者にはどんな言葉でも甘美に響くだろう。
「フン、馬鹿な連中だ」
もうすぐ神殺しが始まる。
巧妙に隠された「それ」を得た冒険者たちが、次々とかの地へ向かうだろう。世界の真実を知り、絶対的なモノなどないと知ったなら当然の結末に思える。
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posted by さくらもち at 17:21| Comment(3) | とある魔法師の物語

2007年12月14日

第三部 22話

「うー・・」
身構えている時に限って、出てこないものである。
「アルカリアス、もう一体くらい沸きませんかねぇ」
「しょぼー」
クラーブ三階には通称“竜”と呼ばれるボスクラスのモンスターが出現する。ヘトレル地方に足を伸ばしたい冒険者にとって、この竜は格好の獲物なのだ。
なにせ、レアアイテムを落とすからである。
「ルーン増えたけど、何も起きないし〜」
「そのマーキング、パワーアップアイテムか何か?」
大人しく付いてきた割に、よく分かっていないギアが覗き込んでくる。
魔法を酷使したばかりなので、左頬から足にいたるまでのルーン文字が浮かび上がっていた。6番目のルーン「エオ」は右腕に現われ、他のそれよりも強い輝きを放っているようだ。
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posted by さくらもち at 23:04| Comment(2) | とある魔法師の物語

2007年12月07日

第三部 21話

「正気ですか?」
そう聞いたのは、皆にドクターと呼び慕われるクリタロス騎士団の聖騎士。もう一人の若き聖騎士は、話の内容が理解できずに大あくびをしていた。
「正気も正気。かなり本気」
「まともな神経とは思えませんね。いや、むしろ無謀極まりない」
「うわー、遠慮ないよこのヒト」
「いいじゃん? そのマーキング増えたら」
「文様!! もしくはルーン文字ッ」
「・・増えたら、強くなれるんでしょ〜」
事態を呑みこめていないからの発言だ。sakuraとJはギアをしばらく見つめてから、どちらともなくため息を吐いた。
「うん、かなりバカっぽいコトゆってたのは認めるわ」
「元々バカですけどね」
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posted by さくらもち at 17:57| Comment(2) | とある魔法師の物語