2008年05月16日

第四章 15話

ネビアが血の谷と呼ばれたのは、理由がある。
「ちょうどテモズとクァナトの中間地点に谷があって、そこが戦場になった・・・・って聞けぇ!!」
「置いてくよ〜?」
身軽な弓師たちが、凹凸の激しい地平を滑るように進んでいく。
谷には三つの段差があり、中央部には何かの祭壇らしき跡が残っていた。四方からの階段はあるものの、ほとんど何も残っていないに等しい。
それが何に使われていたか、知る者はもういない。
「レア武器!」
「レアアイテム!」
「けーけんち〜」
「それ一番しょぼい」
え〜、と不満げなデジレはともかく、サンタと凛はモンスターの攻撃をひらりひらりと避けながら、突き進んでいた。
目指すは、各地でボスと呼ばれていた巨大な魔人たちだ。存在が希少ならば、抱えているアイテムも貴重であるのは道理。特に魔人たちの魔石は良質なものが多く、高値で取引されている。
「人間の血から、魔物の血に変わっただけかぁ」
「何のお話?」
「お嬢さん方、なぁんも聞いてないデショ」
「うん」
テモズとクァナトの戦いは何度も行われた。その度におびただしい量の血が、ネビア谷を赤く染めたという。それだけ戦争が凄まじかったということだ。
谷の地形が複雑なのも、魔法によるものだと識者は言う。
「苦にならないけどねー」
「そうそう、魔法師がいるもん」
「便利だよね〜」
「あんたら・・」
晴れ渡る天気のようなお気楽な会話に、怒りを通り越して呆れてしまう。
だが、それでいいのかもしれない。
過去の戦争は過去のもので、今は谷での戦争はほとんど行われない。両国ではまず騎士団同士のトーナメントが行われ、それによって誕生したトールが戦争の指揮をとる。

過去は過去のもので――・・。

「・・がう」
「sakuraちゃん?」
「違う。過去も今も変わらない」
何も変わらない。
人は戦うことを止めない。それがモンスター相手か、人間同士かの違いだけだ。そしてどの道を選ぶかも、本人たちに委ねられる。
誰が間違っているとか、何が悪だとか、そういう問題ではない。
「やっぱり納得いかねぇわ」
「先生〜、sakuraちゃんが独り言呟いてます〜」
「老化現象の一環だから、放っておいてもいいぉ」
「サンタさん、酷い!」
「この魔人、ケチくさいなぁ」
セルバブに君臨する氷の魔人も彼女らの集中攻撃にはひとたまりもない。前のめりに倒れた背中には、無数の矢が突き刺さっていた。
「お前たちみたいなのがいるから、戦争はなくならないんだ! 消えろッ」
「戦争違うし」
「うん、言ってみたかっただけ〜」
「sakuraちゃんって、たまに電波系になるってホントだったんだ」
「いやいや! デジレさん、それ違」
「本気で消えろとか言われたら、こっちから消してあげるのにね」
残念と笑ったサンタこそが、神より団長より一番怖いとへっぽこ魔法師は思った。
posted by さくらもち at 07:42| Comment(1) | とある魔法師の物語
この記事へのコメント
お、お待たせしました。

ちなみに、最近のへっぽこ的BGMはクレアさんから「英雄」に変わりますた。
なので、たまにヘンなノリになります(ダメぽ
変身ヒーローっていいよね…
Posted by さくらもち(管理人) at 2008年05月16日 07:45
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