2008年05月31日

第四部 17話

へっぽこ魔法師と弓娘たちが、突如現われたカテル神像相手に奮戦している頃。
「・・・・さて、どうしたものか」
吹き抜けの廃墟と化したクラーブで、誰ともなしに呟いた声が風に流される。彼が見つめているのは、一際大きなクレーターの中心部だった。そこには粉々に砕かれた武器の残骸が散らばっている。
「何か、あったというのが正しいでしょうね」
鎧に包まれた手で、柄だった部分を拾った。
強力な力でへし折ったにしては、それぞれのパーツが細かすぎる。だが、魔法以外にルーン強化された武器をバラバラにする事ができるだろうか。
「しかも、理由がない」
そう言いながらも、Jはある予感に眉を寄せる。
とても悪い予感。
そして、それは確信に近いような直感。
幾多の戦場を潜り抜けてきたからこそ分かる感覚。
とある戦士の墓標は、今やぽっかりと空いた穴だけ――


そしてまた場所は移り、
「ぎゃあああぁ!?」
密林の向こう側で断末魔の悲鳴が高く響く。どさりと倒れる青い鎧を、竜虎の足が無造作に蹴り飛ばした。モンスターの輪から脱出したのを見計らって、復活魔法の光が彼を包み込む。
「まだまだ動きが鈍い」
「そ、そんなコト言ったって・・」
「立て。そして全力で逃げろ」
「うえぇ〜」
情けない声を上げるギアを横目に、大将は青い空を仰いではため息を吐いた。清清しいほどに晴れわたった視界に、先日までの戦いが嘘のように思えてくる。
「ムサ苦しい」
「同感です」
野暮ったい独り言には、大量のモンスターを連れてきたマンキンが応える。
最近になって新調したという防具は、要所に黒い生地を使っているのが特徴だ。最も軽い装甲と動きを制限しない柔軟さがウリだが、良質な素材だけに価格も高い。
必然的に、ハイレベルな弓師にしか装備できない貴重品だった。
「華がないですよね」
「お前が言うな、お前が」
「なんなら、ミニスカに変えてきますけど」
「キモイから止めろ」
「あはは」
性別不詳の某弓師を除けば、基本的にアーチャーと呼ばれる職には女が就く。技術を継承する家系がそうであるという点が大きいが、男は戦士や聖騎士になる道を選ぶからだ。
選にもれた者は警備兵となって、都市の境界線でモンスターを見張る。
だから、男のアーチャーは珍しかった。
「ぎにゃー!?」
「大将、頼む」
「ほいほい、お安い御用」
おどけた調子で応え、道半ばで倒れた若き冒険者を復活させる。リバースキュアとは、力尽きた者に不死鳥の生命力を注ぐ聖騎士だけの魔法だ。唯一の召喚魔法ではあるが、消耗する魔力もバカにならない。
「ん。補給行ってくる」
「おう」
「ギア、それまで死ぬなよ?」
「ムリ!!」
悲痛な声には笑い声で返し、大将が帰還していく。
ヘルマーシュ大陸広しといえども、クロロレンス地方ほど緑豊かな所はない。虫型モンスターと石兵が闊歩するスパトキアは、上位冒険者が増えてきたクリタロス騎士団の鍛錬場になっていた。
「みんなも来れば、少しは楽になるんですけどね」
「団長たちは調べ物しているらしいし、賑やかなのはアイテム収集だろ」
「ボス狩りですか」
ここにもいますけど、とマンキンが苦笑いをする。
「ギア・・、大将が戻ってくる前に倒れるなよ。せめて弱体かけてから逝け」
血も涙も情もない言葉には、もはや返す声もなく。
狩場をキープする為、戦士と弓師(男)は己の武器を構え直すのだった。
posted by さくらもち at 04:42| Comment(1) | とある魔法師の物語
この記事へのコメント
うっかり100回越えてました!
皆様のおかげです、本当にありがとうございます!!

で。
記念に何かやらかそうと思います。
って言っても、小話くらいしかない。
とゆうわけで次回更新までリクエスト募集!!
A3でのエピソードや、見たかった対決(会話)などなど。
詳しく指定していただければ、それだけ早く書けます!
……切実に…。
Posted by さくらもち(管理人) at 2008年05月31日 04:47
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