2008年06月29日

第四部 18話

乱れた緋色の髪もそのままに、魔法師が酒場のテーブルにぐったりと突っ伏す。倒れた拍子に巻き添えをくった空瓶を、同じく突っ伏した聖騎士が受け止めた。
「もうヤダ」
「痛いのイヤダ」
愚痴かボヤキか分からないうめき声が交互に上がる。
「しんどい」
「疲れた」
「我々に長期休暇を要求する!」
「じゃあ、酒代払え」
「「ゴメンナサイ」」
別に、二人とも金欠という訳でもない。それなりに難易度の高いマップに向かう事ができるようになったおかげで、高値で取引されるアイテムも拾えるようになった。
だが、同時に命綱となる装備品にも高額の資金が必要なのである。
「インフレ反対〜」
「よくわかんないけど、反対〜」
「地道に稼げる方法教えたでしょ。なんで金がないんだ」
「「メンドイから」」
脱力気味の二重奏に、Wishは無言で眉を寄せた。
「楽して稼ぐ方法なんかないよ?」
「わかってらぃ。ちょっと疲れただけだもん」
「オレはもう動きたくない〜」
「酔っ払い…」
「酒呑んで酔わない奴は化け物だ! モンスターだ!」
「ウチは酒呑まないから酔わないし」
「あー、団長はモンスターっていうより……」
「いうより?」
「何でもないです、ハイ」
あははと笑って、sakuraは体を起こした。
カテル神像と戦った傷はまだ癒えていない。アイテムをケチったのが祟って、ちょっと動くだけでも痛みが走るのだ。とはいえ、街で移動するだけならそれほど支障はない。
ギアはギアで、スパトキアでの戦闘が予想以上に辛かったらしい。体力が化け物級の三人組はまだ狩場で奮戦している。騎士団の通信回路からは楽しげなやり取りが聞こえてきて、こんな僻地(へきち)でヘバっているのが情けなく感じる。
だからといって、蓄積された疲労感が消えるわけもなく。
「何か元気になるような事件ないかなー」
「あるよー」
「あー、たあさんだ〜」
「やっほ〜」
互いに笑顔で手を振り返し、数秒後。
「たあさん!? イダダダ・・」
「ババア」
ガバッと起き上がる拍子に痛みが走る。いらぬ事を言った若者には一撃をくれて、sakuraは改めて稀有な訪問者を見つめた。
「うん」
「なんで?!」
「面白そうな事になってるから、首突っ込みにきたの」
「ホント物好きだよね、たあは」
「Wishに言われたくないな」
白銀の鎧は以前見た時よりも輝きを増している。質も装備も変わったということだろう。sakuraたちがレベルを上げてきたのと同様に、彼女もまた鍛錬を積んでいたのだ。
ぽけーっと見惚れていると、
「増えないよ」
「何がですか、団長」
「sakuraさんにはどれだけ鍛錬しても、願っても、祈っても、神様に乗っ取られても手に入らないモノ」
「チチがなくたって魔法師やれるわい!!」
「あー、確かにこの三人だと最小魔法――
「最年少魔法師!!」
「血涙流して力説せんでも…」
「んで、たあは何か面白い話でも持ってきたの?」
「たあは何も持ってないよ」
「じゃあ、何の為に登場したんですか」
ん〜、とたあは首を傾げた。
「復活記念? すぐ消えるけど」
「消えるんかいッ」
「自称紳士の聖騎士から伝言があってね。えーと、なんだっけ。『悪夢はまだ終わっていない』だったかな」
「……不吉な伝言…」
「そういえば最近、センセの顔見ていないね。通信にも応答しないし」
「さくらちん、思わせぶりな表現使って、次回に引っ張ろうとかしてるでしょ。そうなんでしょ」
「そそそんなコト、ナイデスヨ」
「sakura」
ぽんと投げられたポーションを慌てて受け取る。たぷんと揺れる緑色の液体は栓をしてあるのに、むあぁんと臭いが漂う。
「うぇ、苦そう」
「それ飲んだら、いつもの所に集合」
二人分の気のない返事に笑い、Wishはたあと一緒に酒場を後にする。
ギアとsakuraは相変わらず突っ伏したままで、かろうじて見える互いの顔を見つめてみた。
「どーすんの」
「ヤなヨカンする」
「同じく」
「でも、さくらちんは行かないとダメでしょ」
「あんたも行くの!」
「うえぇ〜」
「センセが心配じゃないのかー!」
「いや、あの人は殺しても死なないって」
「次回が気にならないのかー!」
「更新間隔がまばらだから、みんな離れていくかもよ」
「それは言うなー!」
posted by さくらもち at 20:30| Comment(1) | とある魔法師の物語
この記事へのコメント
待たせた上に、
いつも以上にgdgdですみません。
あとリク一個もらってるんで、
そのうちやります。

…多分(滝汗
Posted by さくらもち(管理人) at 2008年06月29日 20:32
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